インターナショナルスクールに通う子の悩み

前回は奥野から「あえて日本の学校を選んだ理由」「どのようなスタンスで英語教育を考えているか」を伺いました。

そこで今回はお子さんをインターナショナルスクールに通わせている菊谷から「幼少期における英語教育の役割」、「なぜインターに入れたのか」、「インターに通っている子が持っている悩み」を中心にお話を伺いたいと思います!

第1回目で奥野さんが「プリスクールに通わせるなら3歳からで十分かもしれない」と仰っていました。一方で菊谷さんは1歳半で娘さんをプリスクールに入れて今でも英語圏の中(インターナショナルスクール)で生活をされていますが、英語の習得はいかがでしょうか?

菊谷

1歳半~3歳の間で英語が話せたかというとそれほど・・・と言うのが正直なところで(笑)ただ、聞く事はできていたと思うので先生の言っていたことはしっかり理解できていました。そもそも、1歳半~3歳ってまだまだ言葉自体があまり話せない時期なので、「英語を話せるようになってほしい」という点に期待してもしょうがないと思っています。でもその頃に英語を頭にインプットするベースができた事が大きかったなと。その後の3歳~6歳頃の英語力(特にアウトプット)にかなり大きな影響があったと感じています。

「3歳になったら脳が発達してきているので英語の吸収が早い」とか、「言語が分かっている小学生から始めても遅くないんじゃないか」とか、様々な意見があって今のところはまだ正解は分かっていないと思いますし、正解はそれぞれの家庭によって違うのではないでしょうか。

奥野

多分その子たちそれぞれのパーソナリティも関係していて、うちの長男は菊谷と同じく1歳半からプリスクールに通っていて、3歳~6歳の頃になるとスムーズに英語でコミュニケーションがとれるようになっていました。同級生の子は3歳からプリスクールに行き初めて英語ができるようになっていたと前回お伝えしましたが、もしかしたらその子がすごくセンスがある子だったのかもしれません。
菊谷が言うように1歳半~3歳はインプットするベースを作る時期だったというのは同感で、長男も初めて意味のある言葉として発したのは「Sit down !」でした (笑)
きっと保育園で先生から、沢山インプットがなされた結果なのかなって (笑)

なるほどですね(笑)
話せることを期待するのではなく、英語をインプットする基礎を作ったり学んでもらうなら、早い時期からプリスクールに通わせてあげた方が良いってことなのでしょうか。

菊谷

学ぶというよりも、英語を使う環境与えてあげるというイメージですね。「幼児教育」という言葉が流行っていますが、幼児教育の本質は教育するのではなくて、楽しく学ぶ、言い換えると子供が気づかずに学んでいる環境を与えた方が子供は自然に英語を身につけられるんじゃないかって思います。

なので私はまずプリスクールに通わせて英語の環境を与えてあげて、そしてスクールの外では日本語の環境という2つの環境を準備しました。娘が通っていたプリスクールはアルファベットを熱心に教えるという感じではなく、遊びながら英語を知っていこう(Play to Learn)という方針で、私もその教育方針に共感してそのスクールを選びました。子育てしている方は誰でも「何が最善なのか、何が正解なんだろう」と正解を求めたくなってしまうと思いますが、私も奥野も何か選択をするその瞬間は何が正解かなんて分からなくて。ただ、今になって振り返るとこうだったんじゃないかな、結果的にはこうなっています、という1つの実例として保護者の皆さんに知っていただけたらなと。

たしかに大事な我が子の教育となると、つい正解を求めたくなってしまうんじゃないかなと思いますね。だから英語を身につけさせたいって思ったら「早くプリスクールに入れないと」と気合が入ってしまうというか。

菊谷

私はどんな時も親として一本筋が通っているべきであると思っていて。正解を求めるがゆえに方針転換を繰り返してしまうと、子供に負担がかかってしまうと思います。だから親が教育で決断する時はすごく重要だし、方針を一度決めたらよっぽどのことがない限りはブレないで貫く。その方が子供が混乱せず、安心して育ってくれる気がしています。インターナショナルスクールは保護者へのコミュニケーションも全て英語と言う点で、とても親に負担がかかる場合があります。そう言ったことも見据えて、子供だけではなく親も含めて家庭の中で一番良い選択肢を選ぶことが大切だと思います。

環境が何度も変わるとお子さんも混乱してしまいますよね、忘れてはいけない点ですね。
菊谷さんの娘さんは保育園では英語、お家では日本語と2つの環境があるわけですが、実際、菊谷さんの娘さんは英語と日本語の習得度合いはいかがだったのでしょうか?

菊谷

娘たちがプリスクールに入っていたときは、早く英語を習得してもらいたいという想いから、家で積極的に英語で子供に話しかけていたんですけど、正直、流暢にペラペラ話せるわけではなくって。今のインターに転校した後、急に英語力が伸びたんですよ。年齢的な所が大きいと思いますが、家で姉妹で英語で話したり喧嘩したりしていたのも加速的に英語が伸びた要因だと思います(笑)
でも逆に日本語が出てこなくなったりしちゃって。特にインターナショナルスクールに通う子のあるあるエピソードなんですけど。生活の主軸が学校なので、学校で使う言語の方が優勢になってしまうんですね。だから日本語が心配になってきたので、今は家では完全に日本語で会話するようにしています。
インターナショナルスクールに通っていて、日本人なのに日本語がカタコトだと「一体自分は何人なんだ…」とアイデンティティロスに陥る子は多いので、そうなってしまわないように今から日本人としてのアイデンティティを育てています。

そもそも何のために英語を身につけてほしいのかって言ったら、やはり視野を広げることによって、様々な機会をグローバル規模で見出してほしいわけで。なのにグローバルに羽ばたいた時に自国(日本)の言語も話せない、文化の魅力を何も説明できなくなってしまう点を私は懸念しています。”日本人として”世界に羽ばたいてほしいと思っているので、日本の文化とか知識をしっかり身につけてほしいと思っています。もちろんそれぞれのご家庭の考え方があると思いますが、私の家では日本語の家庭教師をつけたりして日本の言葉、文化を知ってもらえるように意識しています。

日本語を習う…みたいなイメージでしょうか。そうすると「インターナショナルスクールに入れなきゃよかったかな」と思うことももしかしてあったんでしょうか?

菊谷

私は英語という言語を身につけてもらうためだけにインターナショナルスクールに入れたと言うより、教育方針に賛同した上で現在のスクールを選びましたので、総合的に考えるとやっぱり入れて良かったと思っています。

インターナショナルスクールに通っていると、その子の主言語が英語になると伺いました。そうするとアイデンティティ・ロスをいずれ迎えることになるということなのですが、菊谷さんはその辺りどうお考えなのでしょうか?

菊谷

そのアイデンティティ・ロスに陥らないように日本語を習ったりとか日本文化を積極的に知ろうとしています。うちの娘は日本舞踊を習っているのですが、日本舞踊をやっているとお辞儀のような日本ならではの礼儀作法を知れたり、着物を着る体験ができたりと、日本の古き良き文化に触れることができます。インターナショナルスクールに通っているからこそ、日本人にとって当たり前の日本文化、日本語を私の家では大切にしています。
ただ、このような取り組みをしていてもアイデンティティ・ロスに陥ってしまうかもしれません。どうなるかは今のところ分からないというのが正直なところです。しかし何も意識も準備もしなければ、間違いなく将来的にアイデンティティで悩むことになると周囲の話を聞いていて感じています。きれいなバイリンガルの子を育てた親御さんのお話を聞くと、やっぱり皆さんものすごく努力をされているんですよね。

バイリンガルのお子さんをもつ親御さんの努力、というのは、やっぱり日本文化に触れさせるということが重要なのでしょうか?

菊谷

そうですね。そもそも親が日本に興味がないと子供は日本の文化に興味を持たないんですよね。だから習い事をさせて「なんでこんなことしなくちゃいけないの?」と疑問をぶつけられる時期がくると思うんですけど、その時は日本という国、文化、言語に対してポジティブな印象を持ってもらえるような説明ができたら良いなと。説明ができるためには私たち親が日本という国に対して興味を持って色々と知っていく努力が必要だなと考えています。

菊谷さんも奥野さんも、アプローチは違えどお子さんに対する願いや期待には近しいものがあるのだと思います。改めてお子さんに対する想いをお聞かせいただけますでしょうか。

菊谷

前回お伝えした通り、私は英語を習わせるためだけではなくてスクールの教育方針にも共感して娘をインターナショナルスクールに通わせることにしました。
将来、子供たちが何をやりたいかはまだ分かりませんが、日本という国の中に収まるのはあまりにももったいないって思います。自分の子どもだけではなくて色々な人たちに対してそう思います。頭が良い子や想像力が豊かな子がたくさん日本にいるのに、言語の壁があまりにも高くて海外に行けない人が多いんですよね。その壁を早めに取り払ってあげたいです。大人になってから英語を勉強しようとすると時間的な制約や様々な事情が出てきたりしてなかなか難しいです。だから親の努力で子供たちの可能性を広げる手伝いができたらと思っています。

奥野

子供の頃から英語をやらせるのは別にバイリンガルになることが目的ではないです。ただこれからの時代は世界に出ていかないといけないよねって考えた時、もちろん大人になってから本腰入れて英語を勉強し始めても良いのですが…。それは相当な努力が必要でかなりハードルが高いです。だからハードルが低いうちに少なくとも英語が聴き取れるだとかコミュニケーションが取れるような手助けをしてあげたいです。先ほど、息子が英語を嫌いになってしまったら…という話がありましたが、できるだけ嫌いになってしまわないように海外に連れて行ってあげるとか何かしら英語で成功体験を積ませてあげたいなと考えています。

英語を習得することが目的ではなく、英語によってその子の選択肢、世界が広がるようにと今から準備をしている点は共通していましたね。
お子さんの将来を真剣に考えるお父さんたちの熱い想いがダイレクトに伝わってきました。お二人のお子さんが羨ましいです…。私も子供ができたら英語を習わせたいなあと思いました。
本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました!

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