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英語教育の問題点を徹底解説!改善方法と現在の取り組みについて

2023/06/02

21世紀に入ると急速に進むグローバル化の流れもあり、コミュニケーションツールとしての英語の必要性がより考えられるようになっていきました。そんな中、日本の英語教育が大きく変わるきっかけとなったのが、2003年3月に文部科学省が施行した「『英語が使える日本人』育成のための行動計画」。この計画は文部科学省が2002年前半に5回行われた「英語教育改革に関する懇談会」で様々な分野の有識者から出てきた要望や意見をもとに作られました。懇親会メンバーは毎回違った人を呼び、それぞれ自由に意見を述べてもらうことで、多角的に議論をしていきます。

昨今の日本では、「英語教育の在り方」について見直され、文部科学省も義務教育中の指導要領や、授業内容など大幅な改革を行っています。

これまでの日本の英語教育における問題点

日本での英語教育で、「英語でコミュニケーションを取る」という点から、これまで問題とされていた一例を紹介します。

受験を目的とした英語教育

従来の英語教育は、高校や大学の入試で点を取ることを目的にした授業内容に偏ってしまっているという問題を抱えていました。入試では英文を和訳したり、読み取ったりする問題が多く、授業内で受験のためのテクニックを学ぶようなことも。英語教育の本質から離れてしまっていますが、「受験合格を勝ち取るためには必要」という意識から、どうしても話す、聞くといったコミュニケーションツールとしての英語からは離れていってしまう傾向にありました。

英語を話す機会が少ない

日本で生活していると、基本的な言語は日本語を使うので、日常的に英語を使う環境というのは多くありません。また、先に出た項目の話とも少しかぶりますが、授業では読み書きが中心となっているため、実際に発音してみたり、会話をしたりする機会も少ない傾向にあります。

もしも実践的な英語を身に着けたい場合は、英会話教室や留学など、自分自身で英語を話すための環境を見つけなければいけない人がほとんどかと思います。

英語教員の英語力と外国語指導助手(ALT)の活用

文部科学省の令和3年度「英語教育実施状況調査」によると、英語担当教員の中でも、CEFR B2レベル(英検準1級:学問上や職業上の目的で、柔軟かつ効果的に言語を用いることができるレベル)以上を取得している英語担当教師の割合は、中学校、高等学校ともに増加傾向にあるものの、中学校で40.8%、高校で74.9%しかいません。

母国語が英語ではない中で、英語教育に成功しているといわれているオランダでは、教員になるための「教員教育コース」への入学にCEFR B2レベルであることが必須とされています。それと比べると低い数値と言えるかもしれません。

英語を使った会話や発音などについては、ALTに補助してもらうことなどもあるようです。しかし同調査では英語の授業時間の中でALTを40%以上活用している割合が、小学校では7割以上、中学校では約3割、高校では約1割という結果なっており、まだまだ活用の余地があるとされています。

課題から見えてきたこと

これまで挙げてきた課題などで一貫していえることは「話す」「聞く」という項目が日本ではうまく教育できてないということです。特に、グローバル化が進むなかで一番の課題となっている英語を使ったコミュニケーションという部分では重要な問題点でもありました。

2000年以降に起きた英語教育改革

日本では2011年に小学校5、6年生で「外国語活動」という授業が実施されるようになり、それまで中学校から始まる英語教育が初めて引き下げられました。現在の義務教育制度が始まって以来の大きな英語教育改革でしたが、文部科学省はさらに充実させるため、2014年に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を設置。9回に及ぶ審議を重ねて、日本の英語教育における課題と改善点をまとめています。

国が示す教育目標・内容の改善

各学校種で指導改善をするだけでなく、さらに英語力を発展させようと、文部科学省は、「小・中・高等学校を通じた一貫した指標の設定」を示しました。具体的には「高等学校卒業時に『聞く』『話す』『読む』『書く』といった4つの能力が使えるようになる英語力を身に付けることを目指す」としています。

小学校で外国語活動を導入したことでコミュニケーション能力の下地となる部分を養うことはできましたが、進学した際の連携が十分ではなかったため、それまでの学習内容を発展させることができていない状況だったため、連携強化を進めています。

学校における指導と評価の改善

目的を明確化したことで、指導方法や評価方法も明確に示されました。

特に中学校、高校においては、学習指導要領を踏まえ「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、学習到達目標(CAN-DO形式)を設定。指導と評価方法の改善が進められています。

高等学校・大学の英語力の評価及び入学者選抜の改善

文部科学省は英語における4つの技能のうち「読む」「書く」に偏っていた入試問題を見直す必要があるとしています。そのため、現在は大学、高等学校及び中学校の学校関係団体、テスト理論等の専門家、資格・検定試験の関係団体等からなる協議会を設けて、どのようにしていくべきか議論が重ねられています。

教科書・教材の充実

「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が上がった当時は、小学校中学年に外国語活動を引き下げる案が進められていたため、教科書を作成する必要がありました。2023年現在は、教材も用意されて各学校できちんと導入されています。

そのほか現在の取り組みとしては、音声や映像データなどを活用した教材導入なども計画が進められています。

学校における指導体制の充実

現在あるALTなどの活用をさらに充実させるほか、地域内で指導体制を強化するなど調整が進められています。

また現職の教員が、自分が受けてきた英語教育とは大きく異なる方法で指導や評価されることが求められているので、そのことに対応できるよう、研修なども行われています。

現在の英語教育について

このような議論が重ねられ、2020年には英語の教育開始時期が小学校3年生に引き下げられるなど、現在も英語教育改革はさらに進められています。

英語教育がどんどんと変わっていく中で、今どのようなことが必要なのか、教育関係者だけでなく、親なども一緒になって、子供たちに何が必要なのかを考えていく必要があるのかもしれません。

参考

 

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